期待値で鯨になる

米国株・ETF・投資信託で資産を育てる合理主義投資ブログ。低コストという名の餌で巨大な鯨へ育てる観測日記。

数万円の祝儀と、椅子の関税と、我が子の奥歯

実家という名の聖域で、親戚の子供たちに「お年玉」という名の、私の通帳を削り取る新春の儀式を無事に終えてきた。

子供たちの純粋な笑顔の数と、私の預金残高が驚くほど正確に反比例するという物理法則を身をもって証明した後、命からがら自宅に戻った。我が子の歯を磨き、洗濯機を回し、ようやく嵐のような彼らを布団に放り込む。さっきまでの喧騒が嘘のような静寂の中で、私はPCを開き、ブルーライトを浴びて傷ついた心を癒やすことにした。

画面の中では、2026年の米国市場がご祝儀相場の真っ最中だ。

私が実家の古い座布団の上で、親戚の終わりのない世間話に適当な相槌を打っていた数時間の間に、世界はすっかり強気になっていたらしい。ダウもS&P500も、そして私の唯一の希望であるナスダック先物も、揃って目に赤色に輝いている。

特にパランティア(PLTR)やマイクロン(MU)の伸びは目覚ましい。私が数万円という、一晩の夢としてはあまりに高額な出費に「これは来世への投資だ」と自分に言い聞かせながら震えていた間に、市場のシリコンたちは勝手に私の数ヶ月分の労働価値を増殖させていた。人間が愛想を振りまくより、半導体が静かに計算しているほうがよほど生産的だという事実に、乾いた笑いが出る。

市場が好調な理由は、トランプ政権による家具関税の延期だという。世界を動かす数兆ドルのマネーが、椅子の値段一つでこれほどまでに右往左往する。その一方で、私はついさっきまで我が子の磨き残した奥歯(それも一番厄介な場所だ)と死闘を繰り広げ、今は洗濯機の脱水が終わるのを全裸で待つ賢者のような心持ちで座っている。このスケールの差に、なんとも言えない愛おしい滑稽さを感じずにはいられない。

PMI製造業指数がどうだのと、専門家たちはもっともらしい言葉で未来を予言しているが、彼らだって明日の昼飯に何が必要かさえ分かっていないはずだ。明日の朝、この赤色の数字が青の海に変わっていたとしても、私はまた同じように洗濯物を干し、昨日と同じようにおにぎりを握る。世界がどうなろうと、私のルーチンは揺るがない。

エヌビディア(NVDA)のチャートを見つめながら思う。AIが人類の知性を超えるシンギュラリティが来ようとも、濡れた重い洗濯物を一つひとつハンガーにかける際の手首の絶妙な角度を、AIが理解してくれる日はまだ遠そうだ。私のささやかな苦労は、まだテクノロジーには奪われないらしい。

洗濯機が止まった。画面の中の数兆ドルの狂騒を閉じ、私は現実の湿った靴下たちの救出に向かう。ロンドンのFTSEが10,000ポイントを超えたという偉業も、部屋の片隅で出番を待つ物干しラックの、どこか寂しげな佇まいには敵わない。

明日の朝、目覚めた時のポートフォリオが、せめて親戚の子供たちに配ったあの数万円の祝儀袋の穴を、ほんの少し……そう、子供たちが買ったチョコ菓子くらいの金額だけでも埋めてくれていることを、静かに祈ることにしよう。

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